日鉄物流株式会社で二等航海士を務める辻 達也さん。
全国各地の港に積荷を運ぶ内航船に乗船し、日々の当直の業務を実直にこなしながら、将来は船長を目指しているという辻さんに、航海士の仕事を選ぶまでのお話と現在の業務に対する想いや心がけを伺いました。
(取材協力:日鉄物流株式会社)
航海士は、航海中、交代で各々が決められた時間に航海当直(見張りや操船など)の業務を行います。また、出入港作業の際は船長の指示により各種機器の操作を行い、荷物の積み下ろしの確認や貨物の管理、船の整備など幅広く担当する重要な役目を担います。
- 船の上での勤務は、4時間の当直勤務を1日2回行っている
- 航海当直のほか、出入港作業・甲板作業など業務は多岐にわたる
- 航海を通して、全国の港へ行ける楽しみがある
現在の業務内容について教えてください。
航海当直では、周囲の船舶の動きや危険物がないかなどを確認するための見張りを主に行っています。船は24時間航海を続けますので、航海当直業務は4時間ずつ3交代、1日合計8時間勤務しています。
また、出入港の作業、*碇泊(ていはく)時には甲板での作業を行います。甲板の作業は船の補修等を行います。船の健全性を適切に保つために、船体にサビがついていたら落として、ペンキを塗るなど、常に綺麗にしています。出入港作業では港に船をつける時に使うウインドラス(いかりを引き上げる機械)の操作も行っています。
*碇泊…いかりをおろしてとまること。
仕事上で常に心がけていることはありますか?
常に点検や補修作業の際には、安全第一に作業に取り組むことです。船上では危険な作業もありますので自分自身が怪我をしないのはもちろんのこと、他人にも怪我をさせないよう心掛けています。
この仕事に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
通常では体験することのできない少し変わった仕事がしたいなと漠然と思って水産高校に入学し、17歳の時に貨物船に乗ろうと考えました。
また、給料も良かったので就職先として魅力的に思いました。高校の同級生と会った時に給料の話をしたら驚かれます。
仕事のやりがいはどんなところにありますか?
全国様々な場所に行けることが楽しいです。また航海当直は、季節や時間帯で変化があり大変な時もありますが、勉強になるのでやりがいを感じます。
港で休暇をもらえる時があるので、観光や食事をするのが楽しみですね。
思い出深い出来事としては、当直中にイルカを見た事です。すごく感動しましたが、今では結構頻繁に見るので当たり前の光景になってしまいました(笑)。
仕事で大変だったことはどんなことでしょうか?
上司によって指導方法が違いますので、少し戸惑うことはありますが、上司の良いところは積極的に取り入れて成長したいと思います。
例えば、航海当直中に他の船を避ける時があり、その方法を教わるのですが、やり方は人それぞれ違います。それでも、やるべき事は共通して「船を避けること」なので、指示を理解し的確に仕事をこなせるよう努力しています。いずれは経験を積んで1番いい自分の形をつくりあげたいです。
仕事上で将来の夢はありますか?
航海士が目指す姿はやはり船長ですね。憧れます。
休暇に関してはどうでしょうか?
3ヶ月乗船して1ヶ月休暇が基本です。
休みの時には野球観戦やドライブをする他に、ジムに行くなど適度な運動もしています。 仕事で体を使っていますが、使う部位が決まっているので全身運動をしなければと思っています。
この職業の魅力はどんなところにあるでしょうか?
やはり日本全国に行けることです。一番好きなのは名古屋港です。名古屋に行くと船内休暇が取れる事が多いという過去の経験からです(笑)。
この職業はどんな人が向いていると思いますか?
「楽しみを自分で見つけられる人」が向いていると思います。仕事は大変なこともありますし、船の上は狭い世界なので逃げる事もできません。
でも辛いことばかりではありませんし、そんな中でも楽しいことはいくらでも見つけられます。与えられたものだけではなく、自分で何かを探し出せる人が向いているのではないかと感じます。
この職業を一言でいうとどんなものでしょう?
世の中の役に立っていると実感しています。かっこよく言えば、積荷とともに僕の夢と希望も運んでいる仕事といったところでしょうか。
2018年12月に都内某港で取材
PROFILE:
25歳 入社6年目 宮崎県出身
二等航海士 辻 達也
日鉄物流株式会社
取得資格:
四級海技士(航海)、第一級無線従事者、一級小型船舶免許
- 2012年
- 宮崎海洋高等学校卒業
- 2014年
- 国立波方海上技術短期大学校卒業
- 2014年
- 日鉄住金物流株式会社入社