北星海運株式会社で一等機関士を務める蛯子 剛さん。
船内のエンジンやボイラーなどの機械を管理・メンテナンスする仕事するのが機関士の仕事ですが、一等機関士である蛯子さんは重要な動力部分であるエンジンなどを担当します。
意外と船上での暮らしを楽しんでいるという蛯子さんに、仕事のやりがいや、心がけていることなどをお伺いしました。
(取材協力:北星海運株式会社)
船にはエンジン・ボイラー・発電機など様々な機械や装置が搭載されています。これらの管理・メンテナンスを行うのが「機関士」です。一等機関士はエンジンなど船の主な動力部分を担当します。
- 船上での仕事は交代制で8時間勤務が徹底されている
- 機関にトラブルがあればいつでも対応する
- 安定した職業であることに魅力を感じた
現在の業務内容について教えてください。
機関士は、船の運航に必要なエンジンやボイラーなどのメンテナンス、船の異常を確認する計器や機器の修理、発電機や配管の点検など、船の設備を管理・整備するのが仕事です。基本は8時間勤務を守っていますが、エンジントラブルなどが発生すれば、いつでも対応する必要があります。
仕事上で常に心がけていることはありますか?
部品や使った工具を元に戻すなど、ひとつひとつの動作も含めて、丁寧に仕事をすることを心がけています。また、精神的には、焦らない・イライラしないこと。雑にして良いことは一つもありません。
こうしたことは先輩方から教わってきたことですが、さまざまな経験をして体にしみついており、今では自分にとって当たり前になってきていると思います。
この仕事に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
中学3年生くらいの時、どこの高校に行こうか進路について考えていました。大学に行くつもりはなかったので就職を見据えて工業高校に行こうと思っていましたが、就職実績を見ると当時はあまり安定していませんでした。
色々と思い悩む中で、私の親戚に船乗りがいたことを思い出し、職業的には安定しているという話を覚えていたので、水産高校に行こうと決めました。
その中で機関士の仕事を選んだ理由は何ですか?
海事産業にもいろいろな職種がある中で、機関士を選んだ理由は、地元の水産高校の専攻科が機関課のみだったからです。でも、学校に通う中で徐々に機械に興味を持ち始めるようになりました。この会社を選んだのも、高卒でも大きな船の機関に関わる事ができるからです。地元にもフェリー会社があるんですけど、航海時間も短く、機関士が整備をするのではなく、業者が整備をすると聞いたので、それじゃつまらないなっていうのもありました。
仕事のやりがいはどんなところにありますか?
やりがいという訳ではありませんが、陸と違い居住所が勤務地なので、船の上にいる時は通勤時間0分というのは魅力です。朝も意外とゆっくりしています。
この船に機関士は3人いますが、3人とも朝8時から12時、お昼休憩をはさんで13時から17時と全員日勤みたいな勤務体制なので、平常時は無理なく安定して働けるというのも魅力のひとつです。
作業予定も無理なスケジュールでは行わないようにしているので、あの作業なら短時間でできるから今日対応しようとか、午後からだと時間が足りないから大規模な作業はしないでおこうだとか、状況に応じて決めたりしています。
仕事で大変だったことはどんなことでしょうか?
過去に経験したことがあるトラブルだったら対処法とかはわかるんですけど、どうしても経験したことのないトラブルとかは悩みます。多くの場合、機関長や本社に相談することで解決策はわかります。
初めての船に乗った時の先輩機関士が、今の機関長だったたんですけど、優しいのでいろいろ聞きやすかったですし助けていただきました。
心がけとして、トラブル発生時は、なるべく早くリカバーするようにしています。
仕事上で将来の夢はありますか?
機関長になることです。そのためにはコミュニケーション能力を高めることが必須だと思います。現在の機関長は、チームの雰囲気をすごく良くしてくれます。技術的な経験ももちろん素晴らしいですが、機関士3人の雰囲気をよくする環境づくりをしてくれるところが一番すごいです。
蛯子さんの仕事を一言で言うとどんなものでしょうか?
私にとっては糧みたいなものですかね。整備を行う知識や経験は、生きていく上で必要な技術であるということです。
2018年12月に都内の港で取材
PROFILE:
27歳 入社7年目 北海道出身
一等機関士 蛯子 剛
北星海運株式会社
取得資格:
三級海技士(機関)
- 2010年
- 北海道函館水産高校 機関工学科卒
- 2012年
- 北海道函館水産 専攻科機関科卒
- 2012年
- 北星海運株式会社入社(機関員)
- 2013年
- 二等機関士
- 2016年
- 一等機関士