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SEA-GOTO 〜海のシゴト ガイドブック〜


安全運航を支えるため、メンテナンス計画を立てることが重要!


 日本郵船株式会社で一等機関士を務める南治侑紀さん。
 機関士には一等から三等までの階級があり、一等機関士は機関長に次ぐ職位として船の動力部分となるエンジンなどの整備や修理を担当します。
 ものづくりへの興味から、工業系の高校・大学に進学。その後エンジニアの進路が「造る」「操作する」「修理する」と様々に分かれることに対して自らのビジョンとやりがいを見つめ直したことなどを伺いました。
(取材協力:日本郵船株式会社)


船のエンジニア「機関士」とは

 船にはエンジン・ボイラー・発電機など様々な機械や装置が搭載されています。これらの管理・メンテナンスを行うのが「機関士」です。一等機関士はエンジンなど船の主な動力部分を担当します。

① 日々のメンテナンスにより船が安全に運航していると非常にやりがいを感じる
② エンジニアとしてどのように働きたいのか、自らのビジョンを見つめ直せる
③ 船ごとに機器が異なり、行き先や港も異なるので航海毎に刺激がある


07:00
起床
08:00
業務開始
18:00
業務終了、夕食
20:00
娯楽時間
22:00
必要に応じて船内見回り
24:00
就寝

機関士として心がけていること


本店でインタビューに応える

業務内容について教えてください。

 乗船している時は、船の安全運航を維持するため、機器のオペレーションとメンテナンスが主な仕事です。
 陸上勤務になった場合は、陸から船をサポートする役割の部署に配属されることが多く、現在は自動車輸送品質グループに配属され、主に自動車船のトラブル未然防止活動と、運航コスト削減活動を実施しています。

仕事上で常に心がけていることはありますか?

 客観的に状況を判断することです。1つの視点だけではなく、複数の視点から物事をとらえ、最適な方法を考え、対応することを心がけています。また、他部署の方と積極的に交流を持ち、自分の知識を広げ色々な視点で考え、アイディアが生まれるよう行動しております。
 やはり仕事において1人でできることは限られています。時には仲間を頼り頼られ、時には自分のみでも解決できるよう、日々色々なことを考えながら仕事をしております。


仕事の結果が見えることで得られる達成感

やりがいを感じるのはどんなときですか?



 船に乗っていた時は、船で運んでいる貨物の規模が大きいため、無事に運び終えるとやはり達成感は大きいものです。
 また、船の機器をメンテナンスした後、機器を始動させた時、安定して運転しているのを見ると、自分が実施した結果がしっかりと見えやりがいを感じます。毎日船の各機器の運転状態を確認し、運転状態が安定するよう、見回りも実施し、メンテナンス計画を立てることが重要です。
 業務に直結しますが、事故件数の削減と、船の運航の燃料費を抑えて航海ができた時にやりがいを感じます。そのためには、対策の提案実施のみではなく、結果のフィードバックにも力を入れています。
 船の燃料費を抑えるためには、原則的には船のスピードを落とすことです。早く運ぶと燃料をたくさん使います。お客様が希望する納期もありますので、スピードを調整しながら燃費も抑えられるようにしています。

大変だと感じることはどんなことですか?



 船内は陸とは違い、物資や道具が限られているため、不具合箇所を発見し、修理をしたくてもできない場合があります。その中でどうやりくりするか、それが難しくもあり、腕の見せ所でもあります。
 緊急対応や日頃のエンジニアのテクニックについては、先輩方の経験談を聞いたり、過去の記録を調べて次回に活かすよう心がけています。またお節介かもしれませんが、事故未然防止、事故対応の手助けになるよう自分の失敗談、経験談を後輩たちに伝える場を設けるようにしています。


原点は幼少時の工作から!ものづくりの魅力


何歳頃から現在の職種に就きたいと感じましたか?きっかけや理由はどのようなものですか?

 中学生の頃からエンジニアになりたいと考え、工業高校、東京海洋大学に進学しました。ただ、エンジニアにも、モノやシステムを作り出す人、操作をする人、修理をする人、多くの分野で活躍されている方々がいます。大学生の時に自分のエンジニアビジョンを考えた時に、機器を運転、修理ができるエンジニアになりたいと考え、この道に進みました。影響を受けたのはやはり大学での乗船実習です。大きな船のエンジンや各機器をオペレーション、メンテナンスした時にやりがいを感じました。


エンジンルームのチェック

エンジニアになりたいと思ったのはなぜなのでしょうか?

 小さい頃からものをつくるのが好きでした。プラモデルなんかもよく作りましたが、自分が作ったものが動く、ということが嬉しかったのだと思います。中学生の時にロボットコンテストに参加したことがきっかけで工業高校や高専に行きたいと思うようになりました。


音を聞くことで機械の調子を診断する

音を聞くことで機械の調子を診断する

仕事上での将来の夢はありますか?

 事故が少しでも減り、船で働いている人、陸で働いている人、貨物を待っているお客様、皆さまが幸せになるよう、目の前のことに真摯に向き合って仕事をしていくことを常に心がけています。
 将来の夢ですが、機関士になったからには機関長になりたいという思いはだれもが持っているのではないでしょうか。

仕事において英語力は必要ですか?

 必要です。乗組員は外国人も多いですし、書類はすべて英語です。日々の業務において必須です。


海事産業が自らの見聞を広げてくれた


お休みの状況はどうでしょうか?

 海上勤務では6ヵ月乗船勤務をした場合、2ヵ月程度は休暇をいただけます。主な楽しみはその間に企画する長期間の旅行です。1週間以上使い、その時期の観光スポットを巡ります。最近は、車で日本の都道府県を徐々に巡り、47都道府県制覇することを目標にしています。
 陸上勤務では週休2日のため、基本的には1泊2日または2泊3日の旅行を企画し、その中にアクティビティを取り入れ楽しむことです。最近は、SUP(サップ)やカヌーを始めました。


仕事のやりがい以外で、海事産業に勤めていて良かったと思うことはどんなことですか?

 外国人の方と仕事ができ、自分の気づけなかったことに気づく瞬間が多くあることです。
 文化や習慣の違いを知ることができ、自分の見聞が広がり、考え方をより豊かにしてくれていると感じます。

南治さんにとって機関士というのはどんな存在ですか?

 無くてはならない歯車のような存在でしょうか。目立たないかもしれないけど、船にはもちろん組織の中でも機関士がいなければ立ちゆかなくなるような、無くてはならない仕事だと思っています。

どんな人がこの仕事に向いていると思いますか?

 1つのことを限定的に取り組むのではなく、色々なことを、様々な場所で仕事がしたいと思う方だと思います。
 船には多くの機器があり、オペレーションもメンテナンスもしなければなりません。船ごとに機器やオペレーションが異なり、かつ、基本的には同じ船に連続して乗ることがないため、乗船するたびに新たに挑戦ができます。また、航路、港も毎回異なるため、毎回刺激があります。
 陸上勤務においても、エンジニアが各地域で様々な業務に従事しています。こちらも定期的に人事異動があるため、ずっと同じ仕事とは限りません。

2018年12月に都内で取材

海事産業は一般のお客様の前に出ることが少ないため、
なかなか表舞台に出ませんが、島国の日本ではなくて
はならない重要な仕事です。皆さんと一緒に仕事をする
ことを楽しみにしております。


PROFILE:
32歳 入社10年目 東京都出身
一等機関士 南治 侑紀 
日本郵船株式会社

取得資格:
一級海技士(機関)
危険物取扱責任者

2009年
東京海洋大学海洋工学部 卒業
2009年
東京海洋大学乗船実習科 修了
2009年
日本郵船株式会社入社(三等機関士)
2016年
自動車輸送品質グループ

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