国土交通省 中国運輸局 尾道海事事務所で船舶測度官を務める湯峯 充彦さん。船舶の最も重要な指標である「トン」数を算定するのが測度官の仕事ですが、船の建造にあたって、図面の段階から就航まで深く関わっていくのが湯峯さんのやりがいに繋がっているそうです。もともと航海士をめざしていた湯峯さんでしたが、途中で方向転換し、船舶測度官になるまでのお話や仕事の魅力について伺いました。
(取材協力:国土交通省 中国運輸局)
トン数は、船舶の大きさや能力を表すものであり、船舶安全法の適用基準及び船舶の登録要件になるほか入港税等の徴収基準になるなど国内外において広く使用される重要な指標となります。この総トン数を算定し確定するのが船舶測度官の仕事です。
- 船舶の大きさや能力を示す「トン」を算定する重要な仕事
- 航海士を目指していたが方向転換し別の形で船に関わっていくことを決意
- 図面の段階から造船が完了する各段階で関わっていくことができる仕事
現在の業務内容について教えてください。
船の安全確認や税の計算をする上で基準となる、船の大きさや能力を表す総トン数を算定するのが船舶測度官の仕事です。
トン数を算定するためには図面審査により適用する規則、基準を調べ、現場計測にて確認する必要があり、これが船舶測度官の業務となります。
「トン」というと重量のことですか?
「トン」は1トン=1,000キロの重量単位ではなく容積の単位に決められた係数をかけたものです。係数も国際的なものもありますし、日本独自のものもあります。
測度官の仕事は船の造船から関わっていくのですか?
まずは船の図面の審査から始まります。審査終了後、造船の段階から関わっていくのですが、船の大きさによってかかる日数は異なります。船体ができたら、構造物ができたら、装飾品がついたら、と船の建造の各段階に合わせて乗船し、検査を行います。
仕事上で常に心がけていることはありますか?
どうすれば基準を満たした船になるのか、どうすればより良い船にしていけるのかを、造船所や船主の立場に立って共に考えていこうと心がけています。そうすることで、わずかですが、海事産業の発展の一助になれればと思っています。
例えばトン数に関わる法律的な助言などもその一つです。500トンを超えた場合、こういう規制や制限が別途かかってきますよ、というようなアドバイスを行います
この仕事に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
もともと船が好きで、学生時代は航海士を目指していましたが、長期間、家族と離ればなれになりたくないという思いが強くなり、就職について悩んでいました。その頃、たまたま運輸局の仕事を見学出来る機会があり、教育体制の充実と、雰囲気の良さを気に入り、この職業に就きたいと思うようになったことがきっかけです。
仕事のやりがいはどんなところにありますか?
トン数は、海事産業の最も根幹となる指標であり、さまざまな場所で使用されます。あいまいであったり、偏りがあっては指標としての機能を果たさなくなってしまうので、公平・公正なジャッジが常に求められており、使命感をもって望むべき職務だと思っております。常に基準のブレがないように気をつけています。
仕事で大変だったことはどんなことでしょうか?
さまざまな基準に用いられるトン数は、公平に算定しなければなりません。船には様々な種類、大きさがありますが、それらに迷うことなく公平な判断をするためには、測度の法律を知っているだけでなく、その歴史や元となる考え方を深く知っていなければならないという点が難しいと思っています。
仕事の楽しい点はどんなところでしょうか?
船が好きなので、仕事で関われるのは嬉しいことです。
また、図面の段階から船の完成まで関わっていける仕事であるというのも、私にとっては嬉しい点の一つです。
仕事上で将来の夢はありますか?
国土交通省に入省してから10年以上経ちましたが、まだ経験していない業務がたくさんあります。出来るだけ多くの業務に携わり、自らの視野を広げていきたいと思っています。海事振興に関わっていきたいです。
休暇に関してはどうでしょうか?
完全週休2日制で、基本的には暦どおりの勤務体系です。1歳の子供がいるので、土日の休みは家族で公園によく出かけて遊んでいます。社会人になりたての頃から趣味で登山をしていますが、子供が生まれてからはなかなか行けなくなりました。頻度は減りましたが、年に数度は山に登ってリフレッシュしています。
この職業の魅力はどんなところにあるでしょうか?
一般企業では体験出来ないようなさまざまな業務、人、場所と関わることが出来るところだと思います。さまざまな体験を通して、人間として成長していけることが魅力だと感じています。
この職業を目指す方に必要なものは何だと思いますか?
私たちの業務は多岐にわたりますが、一貫しているのは海事産業を支えているということです。月並みな言い方ですが、海や船が好きで、その発展に力を使いたいと思える人が向いてると思います。職場は和気あいあいとして楽しい雰囲気ですよ。
湯峯さんの仕事を一言で言うと何ですか?
私にとって「測度官」を一言でいえば、「縁の下の力持ち」だと思います。大々的に表に出ることはありませんが、海事産業のもっとも根幹となる重要な指標「トン数」を算定する重要な職業です。
2019年2月に広島で取材
仕事内容についてはインターネットで検索すれば大抵のことを知ることが出来ますが、職場の雰囲気は実際に行って、自分で感じてみないと分からないと思います。まずは機会を探して、職場見学に来ることをおすすめします。和やかな職場の雰囲気を感じてもらえれば、「この職場で働いてみたい」と思っていただけるかと思います。
PROFILE:
34歳 入社10年目 大阪出身
船舶測度官 湯峯 充彦
国土交通省 中国運輸局
取得資格:
FROSIO 表面処理検査員Level Ⅲ
- 2002年
- 大阪市立高津高等学校普通科 卒業
- 2006年
- 神戸商船大学商船学部航海学コース 卒業
- 2008年
- 神戸大学大学院自然科研究科海上輸送システム学専攻 卒業
- 2008年
- 中国運輸局尾道海事事務所 船舶測度官
- 2011年
- 神戸運輸監理部海上安全環境部 船舶測度官
- 2013年
- 中国運輸局海上安全環境部 船舶検査官
- 2015年
- 中国運輸局因島海事事務所 船舶検査官
- 2017年
- 中国運輸局尾道海事事務所 船舶測度官