国土交通省 関東運輸局で船舶検査官を務める中平 樹さん。船舶の安全と海洋汚染防止を目的に船舶の検査が義務付けられており、その検査を担当するのが船舶検査官です。船の種類も大きさもまちまちで検査にも時間がかかる上に、書類の作成には間違いが許されません。この仕事は船舶の安全だけではなく、海洋の環境を守るためにも重要な仕事のため、緊張感を持って仕事に取り組む様子を伺うことができました。
(取材協力:国土交通省 関東運輸局)
総トン数が20トン以上の日本国籍の船舶について、船体構造や設備の検査をする国土交通省の職員です。船舶検査官は専門知識と経験を活かして船が安全基準や環境基準に適合しているかどうかの検査を行います。
- 「船舶の安全」と「海洋汚染等の防止」を目的として船舶とその設備に対して検査を行う仕事
- 大学教授から船舶検査官という職業の存在を教えてもらい、就職先として選んだ
- 検査だけではなく、書類作成も重要な仕事の一つ
現在の業務内容について教えてください。
船舶検査官の主な業務は、「船舶の安全」と「海洋汚染等の防止」を目的として、船舶や船内で使用する機器や設備の検査をすることです。新しく建造される船舶の図面や、新しく船舶に設置される予定の製品が、法律に基づく技術基準に従って設計されているか確認を行う仕事や、造船所などで船舶や設備などを実際に検査し、安全基準、環境基準に適合しているか判断する仕事などがあります。
仕事上で常に心がけていることはありますか?
大学で専攻していた学科で、船舶に設置されているモータやポンプといった製品の整備について学んだ経験から、検査の時には、行われる整備が本当に正しいのか、まだ交換しなくても大丈夫なのかなど、物事を注視して疑問を持つことを常に心がけています。
この仕事に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
大学3年生の頃です。自分の進路を考えた際に、大きな製品を広い視野で見ることが出来る職業は無いかと悩んでいた頃に、尊敬していた教授から教えていただいたのが「船舶検査官」という職業でした。
大学では車関係を専攻していただけに、船という異業種の製品の世界に興味をもったので飛び込んでみようと思ったことがきっかけです。車に関する知識はありましたが、船に関してはわからない状態ですので、研修を受けたり仕事をしながら覚えていきました。
仕事のやりがいはどんなところにありますか?
なんと言っても自身が検査の担当をした船が無事に就航し、動き始めることだと思います。
初めて担当した船では分からないことだらけの状態で図面に向き合い、ひとつひとつ法律に適合しているか決められた時間内で確認を行い、分からないことがあれば周りの先輩検査官に教えて頂くなど、とても思い出深いです。
図面だけで把握できない部分は実際の建造中の船舶の造船所の方に質問しながらコツコツと業務を行いました。そんな時間も労力も掛かった船舶が無事に完成し、船主に引き渡されたと聞いたときは感動しました。
仕事で大変だったことはどんなことでしょうか?
船舶所有者等に交付するいわゆる証書の作成です。
船には法律に定められた重要な書類が山のように積まれています。通常の船であれば5年に一度、その書類の内いくつかの更新が必要ですし、新造船であれば1から大量の書類を作成しなければなりません。ひとつひとつの書類は記載内容が一字一句決められており、人に交付するという書類である事からも、間違わないように細心の注意が必要です。
この作業はこれから何度も行わなければならない作業で大変な部分はありますが、こまめに見直す癖が身につきました。
仕事のキャリアアップはどのようになっているのでしょうか?
私たち運輸局の中では私が担当している船舶検査官、船舶測度官、外国船舶監督官があります。外国船籍の船に対する検査を行う外国船舶監督官の仕事は、英語だけではなく多言語の世界になりますので、仕事の幅が更に広がります。
休暇に関してはどうでしょうか?
週休完全2日制で、基本的に暦通りの休みとなっています。また、夏には特別休暇があり、有給と組み合わせることで1週間以上の長期休暇を取ることも可能です。私の場合は長期休暇などを利用し、地元の友達と集まり遊んだり飲みに行ったりなどしています。
この職業の魅力はどんなところにあるでしょうか?
自分のやりたかった「製品を広い視野で見る」ことができることです。
様々な種類の船全体の状態を見ることが私たちの業務なので、大型船からプレジャーボート、時には水陸両用船といった通常では乗ることができない特殊な船に乗ることもあり、その裏側を見ることができます。そういった業務に関わることができるのが、この仕事について良かったと思うことです。
この職業を目指す方に必要なものは何だと思いますか?
私たちの業務は、法律を読む、船や配電盤などの製品の図面を見る、整備されているモータやポンプなどの製品を検査するなど多くの業務内容があります。
多くの知識は職場で培われていくことがほとんどです。そのため、コツコツと地道ながらも、知識を積み上げる事ができる人に向いているのではないでしょうか。
また、過去を振り返ると英語をもっと勉強しておけばよかったと思います。使う機会は多いです。日本船籍の船であっても外国の船会社が造っている船もあります。その場合は図面も英語で書かれていますので苦労しています。
現在の仕事を一言で言うと何ですか?
船舶検査官とは、船舶の安全と海洋環境を守るエキスパートだと思います。
2019年2月に横浜で取材
日本経済において、船は無くてはならないものです。そのため船には安全が求められます。
安全を保つことは日本の経済を縁の下で支えることにつながるのです。
そんな大きな役割が果たせるこの業務で、ぜひ一緒に船の安全を守っていきましょう。
PROFILE:
25歳 3年目 広島県出身
船舶検査官 中平 樹
国土交通省 関東運輸局
- 2012年
- 広島県立廿日市高等学校卒業
- 2016年
- 広島工業大学卒業
- 2016年
- 中国運輸局海上安全環境部
- 2018年
- 関東運輸局海上安全環境部