墨田川造船株式会社で製造を担当している島崎賢人さん。入社時から船の設計に長く携わり、現在は、造船の製造現場で現場監督を担当し、図面をもとに製造工程や工事方法の計画を検討したり、現場作業員への指示を行っています。
技術職と管理職の両方の知識を持つ船造りのエキスパートの島崎さんに製造の仕事について伺いました。
(取材協力:墨田川造船株式会社)
設計に基づき、船舶を建造する部門です。近年、船造りは機械化が進んでいますが、職人による熟練の技も大いに生かされています。製造はさまざまな工程に分かれて行われていることから、生産の流れを管理することも重要なので、船に関する幅広い知識が必要とされる仕事です。
- 現場監督には専門職の知識や経験も必要
- デスクワークも多く、協力会社や職人たちが仕事をしやすい環境を整えている
- 匠の技を持つ“スゴ腕職人”たちからたくさんの技術を習得できる
業務内容について教えてください。
製造現場の管理・監督を担当しています。以前は技術部に所属しておりましたので、設計で培った技術力を活かして製造工程や工事方法の計画を検討したり、現場作業員への指示を行っています。
私たちの建造している船は高速船が多く、強度やスピードを重視されるものが多いので、軽量化や耐久性を常に追求しています。
具体的にどのような仕事を担当しているのでしょうか?
*船殻(せんこく)、配管、*電装、塗装などのさまざまな専門職の職人さんに協力してもらい、交互に作業して一隻の船を造り上げる新造船の現場監督を担当しています。職人さんの手が回らないときは工期に遅れが出ないように、自ら作業に入ることもあります。そのため現場監督の業務以外にも専門職の知識や経験も必要となるやりがいのある仕事です。
*船殻…船の骨格や外郭を形成するブロックを船台上やドックで組み立てること。
*電装…電線及び電気・電子機器を船に取り付けること。
仕事に対してのこだわりはありますか?
現場以外の仕事ですと、職人さんが作業をしやすい環境を用意しておくことも現場監督の重要な仕事です。そのため、製造工程の管理、工費の資産など考える時間も多く、デスクで過ごす時間も少なくありません。その他、職人さんが作業できるように海に浮いた船を陸にあげる時に、船の設計図をもとに固定する土台も作るので、図面を理解してどうやって安全な環境をつくるかを考えることも現場監督の仕事です。
簡単に造れる船など一隻もありません。時間をかけて丹精込めて造っています。しかし、次々来る発注依頼に対応するため時間をかけすぎるわけにもいかず、現場監督として、いかに正確に効率よく造れるかを常に考えています。
入社したきっかけは?
学生時代に家族で遊覧船に乗った時、漠然と「こんな船を造ってみたい」と思ったことがありました。自分で造った船に家族や仲間たちと乗ったら感動するに違いないと強く思ったことを今でも覚えています。
その後、造船所に興味を持ち調べたところ、当社が遊覧船だけではなく人の命を守る巡視艇や消防艇も建造していることを知り、ここしかないと入社を決めました。
どんな人がこの職業に向いていると思いますか?
設計者は綿密な計画を立て、そして試行錯誤して、建造完了までの道筋を立てる必要があります。そうした意味では、「造船設計者」とは戦国時代の“軍師”に近いイメージだと思っています。
やりがいを感じる瞬間はどんなときですか?
私たちが作る船に量産タイプはなく、常に唯一のものを建造しています。
図面から描き起こしたものが形になり、それが人を助けたり喜ばれたりと活躍する姿を見ると感動します。巡視艇や消防艇であれば、性能よく使いやすい船を考え、旅客船であればお客様が思い出に残るような素敵な船になるよう心がけています。苦労も多い分、自分が手がけた船が海に浮かんだときは喜びもひとしおです。
反対に、難しさや苦労を覚えるときは?
技術部で船体の設計をしていたときはさまざまな壁にぶつかりました。造船は経験がものをいう「経験工学」といわれます。若い頃はベテランの力がなければうまくいかないときもあり、図面を描くのが嫌になった時期もありました。でも、図面が完成したときの達成感や自分が描いた図面が形になっていく工程を見ていると、苦労した分だけ喜びがわいたのを覚えています。
休暇の状況や、余暇の過ごし方について教えてください。
家族と休日、それと日曜日は大切に過ごしています。ドラゴンボートというボート競技を趣味にしており、そのために日課として仕事終わりには筋力トレーニング、それに加えて日曜はジョギングもしています。
大会シーズンになると、会社の仲間たちやボート仲間とともに大会に出場します。会社で出場するようになり15年ほどになりますが、今では社員や協力会社の方も合わせ25人で力を合わせボートを漕いでいます。
この職業に就いてよかったと思うことは何ですか?
海と隣接した職場なので、海の広大さを感じられること、そして自分が手がけた船に乗る機会が多いことです。何より気の合う仲間と出会えたことは何よりの財産だと思います。また、特に趣味で始めたドラゴンボートでは、会社の垣根を越えて、多くの仲間もできました。造船という海に関わる仕事だったからと思っています。
造船業を一言で表すとしたら?
「男のロマン」です。時には嵐も来る自然の中で、安心・安全に運航する船を造るために、技術力、行動力、仲間たちとの連携力、すべての力を合わて「船」という一つのカタチを造り出すのが造船という仕事です。
この世界では学ぶことがたくさんあり、自分の考えや力だけでは船を造ることはできません。先輩たちや職人さんからも色々なことを学び取り、よりよい船を造れるように努力していきたいです。
2019年2月に都内で取材
私たちが造る船は、車などの量産タイプではなく唯一のものを建造しています。それがときに人を助け、喜びを届けるやりがいのある仕事です。
とくに製造に関しては船が完成するまでのすべての工程に関わるので、できあがった頃には愛着さえわきます。この感動のある仕事をぜひ一緒にしましょう!
PROFILE:
46歳 24年目 埼玉県出身
造船製造 島崎 賢人
墨田川造船株式会社
取得資格:
小型造船主任技術者、
アルミニウム合金構造物溶接管理技術者
- 1991年
- 西部台高等学校卒業
- 1994年
- 東海大学海洋学部船舶工学科卒業
- 1994年
- 墨田川造船株式会社入社技術部船体設計配属
- 2000年
- 製造部配属