海と友と ― 副委員長 石原 望 ―


サーフィンと初めての出会いは伊豆の海だった。黄ばんだ重いサーフボードだけ手渡され、彼は沖に出ていった。
真似て漕いでみたが、波に乗るどころか巻かれるばかり。浜に上がろうとした時、白波がふわりと私の体を浮かせた。すごいスピードで体が浜に走っていく。これがサーフィンか!
初めて味わったこの感覚で完全に海の魅力にハマってしまった。海のスポーツが最高だ、一生続けて生きたいと思っていた。
しかし私は、その後交通事故に遭い一生ベッド暮らしだと言われた。退院後も車椅子姿を見せたくないと引きこもりの日々が続いた。
何度も海に誘う海友に根負けし、見るだけならと出かけた海辺には海友らがサーフボードを持って待ち構えていた。サーフボードに乗せられ、まんまと海に入れられた。白波とタイミングを合わせてボードが滑る、ふわりと体が浮かんで体が浜に走っていく。伊豆の海で初めて出会った時と同じ感覚だった。
娘の同級生パパから障害者カヌー体験会の誘いがあった。サポートを受けながら初めてカヌーに乗った。不安を感じながらパドルを漕ぎ進める。なんと、爽やかな風と小波が心地よいのだろう。カヌーは誰もが同じ目線、そのフィールドは完璧なバリアフリー!広い海のどこまでも自由に進むことができた。海から見る島の木々、空の青さ、手ですくえそうなトロピカルフィッシュたちは私を待っていたように思えた。下肢麻痺で車椅子生活の私にはサーフィンやカヤックは絶対に無理だと思っていた。今は、大好きな海で色々なスポーツにチャレンジしている。海で友と共に生きる最高の時間と喜びを与えてくれている海に今日も感謝!




<プロフィール>
石原 望(いしはら のぞむ)
一般社団法人日本障害者カヌー協会 普及委員会副委員長
生年月日 1958年2月23日
出身地 東京都
障害歴 2015年3月、仕事帰り駅に向かって歩行中、タクシーに追突される。脊髄損傷 対麻痺(Th11)で8ヶ月間入院、
4ヶ月間のリハビリ通院。車椅子生活。
受傷前のスポーツ歴 サーフィン、SUP、ダイビング、マリンジェットなど。
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